PTSDに対する持続エクスポージャー療法の発展的研究

トラウマとPTSD

トラウマとPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、自然災害、戦争、犯罪、性暴力、虐待などの要因によって引き起こされています。特に日本では、東日本大震災や阪神・淡路大震災のような大規模災害後に、多くの被災者がPTSDを含む様々な心理的苦痛に苛まれていることが報告されています。

しかし、精神的な問題を公にすることへの抵抗感から、適切な支援や治療を受けることなく、症状が悪化するケースも少なくありません。近年、医療機関やカウンセリングセンターでは、認知行動療法(CBT)やEMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)などのPTSDに対する治療法が普及しつつあります。

持続エクスポージャー療法

様々なPTSDの治療法の中でも、最もエビデンスが集積しているものの1つが、持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy, PE)です。この治療法は、患者が過去のトラウマを安全な環境で繰り返し想起し、徐々にその恐怖や苦痛を軽減することを目指します。PEは通常、8〜15回のセッションで構成されます。主な治療要素は以下の通りです。

  • 心理教育(Psychoeducation)
    PTSDの仕組みや治療の目的を説明し、患者が安心して治療を受けられるようにします。

  • 呼吸法の訓練
    リラックス技法を習得し、治療中の不安を軽減します。

  • 現実エクスポージャー(In Vivo Exposure)
    回避している場所や状況に段階的に直面することで、恐怖を軽減します。

  • イメージ想起エクスポージャー(Imaginal Exposure)
    トラウマ体験を詳細に語り、繰り返し想起することで、感情の処理を促進します。

政府や自治体も支援体制を強化しており、災害後の心のケアや犯罪被害者の心理的支援が進められています。しかし、依然として治療へのアクセスのハードルは高く、特に地方では専門的な支援が不足しているのが現状です。そこで今後は、PTSDに関する理解を深め、誰もが適切な支援を受けられる環境整備が求められています。その一貫として、田中はオンラインでPEを提供しその効果を実証する研究に参加しています4)


4)「ウェブ持続エクスポージャー療法の効果検証と普及 コロナ禍にトラウマ治療を届ける」科研費基盤C、研究代表者井野敬子。このホームページは、JSPS科研費 JP22K03142の助成を受けて作成しています。