子どものこころの健康を促進する超短期介入研究

子どものこころの健康を促進する超短期介入研究

日本の子どもたちの精神健康の現状

日本の子どもたちの精神健康は、近年悪化しており、様々な側面からその課題が浮き彫りになっています。

最も憂慮すべき点は、自殺者数の増加です。2024年には、小中高校生の自殺者数が527人と、統計開始以来最多となりました5)。また、世界的にみても主要7カ国(G7)の10~19歳の死因で1位が自殺なのは日本だけです。

さらに、日本の子どもたちの精神的幸福度は、先進国38か国中で下から2番目と非常に低い水準にあるともされています。

こうした状況を受けて、政府や自治体は、子どものメンタルヘルスに関する調査研究や、学校現場での早期発見・支援体制の強化に取り組んでいます。文部科学省は新しい学習指導要領を策定し、段階的にメンタルヘルス教育を導入しています。

具体的には、小学校では「不安や悩みへの対処」、中学校では「ストレスへの対処」、高等学校では「精神疾患の予防と回復」といった内容が保健体育の授業に組み込まれました6)。

また、学校現場では「こころあっぷタイム(Up2-D2)」などのメンタルヘルス予防教育プログラムが試験的に導入されています7)。これらのプログラムは、子どもたちの心の健康を支援することを目的としており、一定の効果が報告されています。

しかし、その有効性が十分に検証されていないことや、実施にあたって授業時間の確保や教員の養成など、多くの課題が指摘されています。

新しい子どものこころの健康を促進する超短期介入開発

このような現状を受けて、私たちは子どものこころの健康を促進する新たな介入方法の研究をスタートしました。

この研究プロジェクトは東京大学教養学部とセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが協働で実施しています。
この研究の目標は、精神保健の専門知識がない大人でも実施可能な45分程度の子どもたちへの精神健康に関するプログラムを開発することです。

本介入プログラムは、世界保健機関が開発した、

Psychological First Aid(PFA)3L(Look/Listen/Link:見る/聴く/繋ぐ)

Psychological First Aid(PFA)
3L(Look/Listen/Link:見る/聴く/繋ぐ)

を採用しています8)。

PFAは災害や事故、暴力などのストレスの多い出来事を経験した人に対して、早期に行う心理的支援の方法です。専門的なカウンセリングではなく、安心感を与え、安全を確保し、基本的なニーズを支援し、話を聴いて寄り添うことで、心の安定を促すことを目的としています。

誰でも学べるシンプルな支援手法で、被災地の支援者や教育現場などでも活用されています。新たな介入プログラムでは、PFAの行動原則3Lのモデルに則りながら、子どもたちが自分自身や友達のこころの状態に気づく力を高め、友達同士や大人やコミュニティーとの繋がりを深められるな介入を行います。

プログラムの詳細は今後このホームページでも順次アップデートしていく予定です。

5)    文部科学省 令和7年2月10日令和6年の児童生徒の自殺者数(暫定値)の公表を踏まえた 児童生徒の自殺予防に係る取組の強化について(通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00014.htm

6)    文部科学省 学習指導要領に基づく保健教育の推進
https://www.mext.go.jp/content/20240702-mxt_kenshoku-000018564_0076.pdf

7)    岸田広平、他 日本における学校でのメンタルヘルス予防教育の現状と課題 -こころあっぷタイム(Up2-D2)の社会実装-.不安症研究 15(1),10-19, 2023
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsad/15/1/15_10/_article/-char/ja

8)    WHO Psychological first aid: Guide for field workers
https://www.who.int/publications/i/item/9789241548205

このホームページは、東京大学とセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの共同研究「子どもの心理社会的支援のための教員およびスクールカウンセラー向けの教材開発」の研究費を用いて作成されています。